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コラム「ERP再生計画」第六回「IoTサービスに対応する次世代ERPのイメージとは」   著:鍋野敬一郎

はじめに

IoTは製造業やヘルスケア、物流、エネルギーなど幅広い分野でその活用が拡大しています。前回は、建設機械の事例からIoT技術で収集したデータを活用したサービスを顧客へ提供し、その顧客情報をERPで管理するというケースを紹介しました。今回は、これを更に掘り下げて次世代ERPのイメージを考えてみたいと思います。

IoT技術を利用したビジネスと従来ERPで不足する機能について

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 IoT技術の活用については、ドイツが提唱するインダストリー4.0(第4次産業革命)と呼ぶ製造業における利用や、米国の産業向けIoT(IIoT)などがあげられます。
センサーや機器などから得られるデータを収集して、この情報をビッグデータ解析やAIなどを使って新しいサービスを生み出す取り組みです。ゼネラル・エレクトリック社(GE)では、独自開発したIoTプラットフォーム「Predix(プレディクス)」を使って顧客へ新しいサービスを提供しています。
航空機のエンジンに取り付けたセンサーから取得したデータを活用して、燃料消費を減らすサービスを提供したり、故障を予知してトラブルを回避したりするサービスを提供しています。GEは、顧客へモノとサービスの両方を提供することでモノを作るだけの製造業よりも高い利益を上げることに成功しています。
経済産業省が製造業におけるIoT技術の活用について説明する資料によると、GEのように製造業はモノづくりによるビジネスと、モノが生み出すデータを活用した新しいビジネスの両方から売上/利益をあげられると説明しています。IoT、ビッグデータ、AIは、モノづくりで生産性の向上に役立ち、サービスでは新しいビジネスモデルの創造に役立つことが目指す変化だと書かれています。(図表:"IoT/BD/AIが製造業にもたらす変化"より)

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 これまでのERPシステムは、生産性向上に対応する機能は搭載していますが、膨大なIoTデータを取扱う機能や新しいビジネスモデルに対応する機能には対応出来ていません。前述のGEでも、IoTサービスを提供しているシステムとGEが導入しているERPシステムが連携しているのは、顧客情報と販売管理の機能のみです。GEでは顧客へ提供する燃料消費を抑えるサービスは、ERPとは別のシステムで処理しているのでその結果データを別途課金モデルに合わせてERPの販売管理で請求しています。いずれこうした複数システムをまたがって情報を連携するようなやり方ではなく、互換性のあるシステム基盤(プラットフォーム)の上にバックオフィスの業務処理データもIoTデータも合わせて処理できるような仕組みが出来るようになると思われます。そのポイントは、従来のERPをベースに膨大なデータを処理出来る機能と、新しいサービス提供や複数のビジネスモデルに対応できる進化したERPになると予想されます。

新しいビジネスモデルと独自の管理指標に対応した次世代ERPのイメージとは

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 次世代ERPにつながるイメージを具体的な事例でご紹介したいと思います。
 設備機器メーカーのケーザーコンプレッサー社では、顧客に工場などで利用するコンプレッサーを販売するのではなく、コンプレッサーを貸し出す新しいビジネスモデルを生みだしました。これは機器をレンタルやリースするようなやり方ではなく、顧客がコンプレッサーを利用した圧搾空気の体積量を集計して従量課金型で請求する独自のビジネスモデルです。コンプレッサーには生成した圧搾空気の容量を自動的に集計する機能が備わっていて、顧客が支払うのは利用した分だけです。故障やトラブルが生じると圧搾空気を作ることが出来ないので、顧客は一切費用を支払う必要はありません。コンプレッサーの稼働情報は、全てメーカーで把握していますのでトラブルが発生しても即時に修理されます。顧客は、季節変動が大きく稼働率が変動する工場ではこの新しいビジネスモデルの契約を交わします。また、工場新設などで初期投資を抑えたい企業なども、この契約を上手く利用することが出来ます。ケーザーコンプレッサー社は、旧型や再生品のコンプレッサーをこの新しいビジネスに利用すれば、製品在庫を減らしてキャッシュフローを良くすることが出来ます。

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 中堅フォークリフトメーカーのSTILL社が開発した新型ロボットフォークリフト"CubeXX"は、フォークリフトを売るのではなくフォークリフトが動いた距離で利用料を支払う仕組みになっています。このロボットフォークリフトは、倉庫や物流センターなどでの利用を想定したもので、顧客ごとに調整されたタブレットシステムが提供されます。全ての稼働データは自動的にデータ収集されて、そのデータを解析した結果から導線の渋滞状況や在庫の最適な配置についてアドバイスを得ることが出来ます。このSTILL社のロボットフォークリフトを導入すると、常に最適な在庫管理サービスを受けることが出来ます。これが、フォークリフトを製品として製造販売して価格競争せずに顧客価値をサービスで提供して他社と差別化するポイントとなっています。いずれの製造業も、モノを作って売るのではなく、モノを独自の管理指標で従量課金型サービスとして提供しています。「モノの所有からモノの利用へ」そのビジネスモデルを変えているところが特徴です。つまり、このような企業に求められる次世代ERPには、既存ERPの機能に加えて膨大なIoTデータを収集管理する機能と、そのデータを活用したサービスや新しいビジネスモデルに対応できる機能が必要となるのではないでしょうか。

次回の内容

 今回は製造業のIoT事例を参考にして次世代ERPの機能要件について考えてみました。これまでERPは、コスト削減や生産性向上を訴求していましたが、次世代ERPではこれに加えて売上/収益に直接貢献する機能が備わることになります。次回は、製造業以外の産業向け次世代ERPについて業界の特徴を紐解きながら考えてみたいと思います。

以上

このコラムについて

ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏によるコラム第6回「IoTサービスに対応する次世代ERPのイメージとは」を読まれていかがでしたでしょうか?

今回のコラムでIoTについて書かれていますが、事例のご紹介が私には印象に残りました。残念ながら日本企業のIoT導入については海外企業の後塵を拝しつつあります。その意味でも海外の事例がとても参考になるはずです。今回ご紹介された事例ではなかなか細かく理解はできないと思いますが、個人的にはデータフォーマットの部分を参考にしていただくことができると良いと思っています。システムのプロセスの部分は後からでもまだ修正が容易ですが、IoTにより集積されるデータは継続的な分析が必要になり、あとから修正が難しいです。この部分ではデータ解析の分野の知識を得たうえで、自社の解析ポリシーとデータフォーマットの在り方を社内で議論する必要があると思います。かなり大きな葉足になりますがIoTの社内導入にはビッグデータの要素も必要になってくると思います。

データ解析についてはどの部門が担当するのか難しい部分でもありますが、IoTを活用したビジネス展開をされる企業ではデータ解析についても準備を進められるとよいと思います。

しばらく大きなニュースがなかったERPの分野でも今後、IoT、ビッグデータの波で大きな変革を強いられると思います。その波に対応するためにも柔軟に対応できるERPの導入は必須であると考えています。柔軟性の高い国産GRANDITをベースにした双日システムズのERPソリューションをその際には是非ご検討ください。

■双日システムズのERPソリューション
https://www.sojitz-sys.com/solution_service/grandit/

鍋野敬一郎 プロフィール

nabeno_profile006株式会社フロンティアワン代表取締役

1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。
農業用製品事業部に所属し事業部の営業、マーケティング、広報を担当。
1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング、広報、プリセールスコンサルタントを経験。その後、アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)の立ち上げを行った。
2003年 SAPジャパンを退社しコンサルタントとして業務コンサルティングおよびERP/SCMなど基幹系システムなどの導入支援・提案活動に従事。
2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。ITベンダのERP/SCM、クラウドなどソリューションの企画開発支援、ユーザー企業のシステム導入支援など業務アプリケーションに関わるビジネスを行う。2015年より一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)のサポート会員として活動(パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

※2014年に解散したERP研究推進フォーラムの研修委員および講師

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